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学園生活

2025年12月23日

学園生活

「野生生物と社会」学会大会(早稲田大学)

【テーマセッション】人口減少時代の新たなアプローチ~関係人口によるサル対策~

八王子市獣害対策課、野生動物保護管理事務所、EGOの方が、獣害対策としてのゆずの収穫を通して、関係人口を増やすという切り口で発表されました。

その発表の中で、ゆず収穫やビール用ゆずの皮むきに携わったパウロ生2名がスピーチをする機会をいただきました。緊張しながらも、自分の言葉で思うことを述べることができました。

2人のコメントは次のような内容でした。

Sくん

今回のボランティアを通じて、私たちは「ただ収穫する」以上の、地域の未来に繋がる大切な学びを得ることができました。

当初は「ゆずの収穫」が楽しそうだと思っての参加でした。しかし、事前のレクチャーで恩方地域の獣害の現状を知り、意識が大きく変わりました。「野生の猿がいたら珍しいから撮影する」と答えた生徒が、私を含め大半でした。しかし、撮影の対象ではなく、地域が向き合うべき課題として捉え直すことで、収穫作業一つひとつに「獣害対策の一翼を担っている」という思いで臨むことができました。

猿が食べる前に収穫することは、野生動物との適切な距離を保つ「共生」の第一歩です。パウロの多くの生徒がこの活動に主体的に参加し、楽しみながら課題解決に関わったことは、地域を支える「関係人口」を増やすための非常に有効なプロセスであると実感しました。

翌日の皮むき作業では、自分たちの手がけたゆずがビールの香りの決め手になる喜びを感じました。 ゆずを商品化して地域経済を活性化させることは、SDGsが掲げる「持続可能な社会」の実現に直結します。このビールを手に取った人が、その背景にある獣害対策のストーリーを知る。そんな「価値の循環」が生まれることに、大きなやりがいを感じることができました。

地域の課題をポジティブなエネルギーに変えるプロジェクトだったと思います。私たちが剥いたゆずが、春にビールとなり、誰かがおいしく飲んでくれたらとても嬉しいです。

Iくん

私は八王子の住宅地に暮らしています。同じ市内でも自然豊かな環境に惹かれてパウロに入学しました。そんな私にとって、学校周辺で起きている獣害の深刻さは想像を超える驚きでした。純粋な好奇心で参加したボランティアでしたが、地域の方々と動物との関係がこれほど切実な課題を抱えていることを知り、自身の認識を改める機会となりました。

現在、地域と動物の関わりは衰退の途上にあるかもしれません。しかし、この「下り坂」の現状を「上り坂」へと変えていくためには、私たち若い世代が正しい接し方を学び、動物と別々に暮らすのではなく、共に生きる知恵を次世代へと繋いでいくことが不可欠です。

私たちが収穫したゆずが「高校生による獣害対策」というストーリーを持って世に出ることは、大きな意味があると感じています。このビールを通じて地域の問題を広く発信することが、関係人口の創出や高齢化問題の改善へと波及していく。その一翼を担えたことに、大きな誇りを感じています。