ブックカバー
ずっと、国語を教えてきましたが、コロナの頃に思うところあって家庭科の教員免許を取りました。
今年度は、2年生の家庭基礎と、1年生の現代の国語を担当しています。
高校の家庭科は、3年間のうち、2年生での週に2コマという限られた時間です。 だからこそ、「この時間を通じて、生徒たちに一生モノの『生きるために必要な力』をつけてほしい」と思い、授業内容を考えています。
中間試験が明けてからの家庭基礎では、「ブックカバー」の製作に取り組んでいます。
もちろん、いきなり作り始めるわけではありません。その前段階として、まずは「まつり縫い」と「ボタン付け」を徹底的に練習しました。衣服がほつれたとき、ボタンが取れたとき……誰かに頼るのではなく、自分の手ですっと直せること。これこそが、日常で最も必要で、自立した大人になるための第一歩だと考えているからです。
基本の技術をしっかり身につけたところで、いよいよブックカバーの本番です。 今回は、伝統的な「畳縁(たたみべり)」を素材に選んでみました。
畳縁は、生地がしっかりしているため端の処理(ほつれ止め)がいらないという良さがある反面、三つ折りにしたときには少し厚みが出て、縫いづらさや難しさもあります。
授業中、カメラを向けるのが申し訳なくなるほどの、見事な「静寂」が教室に訪れました。生徒たちはみんな、信じられないほどの集中力で、無言で針を進めています。
用意した様々なバリエーションの中から、生徒たちは自分で好きな柄の畳縁を選びました。 作るサイズも、読書のための「文庫本バージョン」か、毎日の学習に欠かせない英単語帳「ターゲットバージョン」か、自分のライフスタイルに合わせて選択します。
「自分で毎日使うから、ここは丁寧にやろう」 「おじいちゃんとおばあちゃんにプレゼントしたら喜ぶかな」
そんなふうに、完成した先の使う人の笑顔や、自分の日常を想像しながら一針一針を運ぶ時間は、どこかあたたかく、とても豊かなものに感じられます。
国語で言葉の力を耕すことも、家庭科で生きる技術を磨くことも、すべては生徒たちの未来の「生きる力」へと繋がっています。 世界にひとつだけの素敵なブックカバーが完成するのを、私も今からとても楽しみにしています。